既存の概念に囚われない、食と飲料の新たな地平。レストラン『No Code』とIBUKI bottled teaが描く「価値の創造」と「未来の展望」

レストランの体験価値が多様化する中、ノンアルコール飲料やティーペアリングへの注目が高まっている。既存の枠組みに囚われず、常に新たな挑戦を続けるレストラン『No Code』の米澤シェフと、新たなジャンル「メキシカンフレンチ」を開拓する新シェフの久松氏。 異なるジャンルで「食と飲料の未来」を見据える彼らが、レストランにおける飲料の価値、メイド・イン・ジャパンの真髄、そして今後の展望について語り合った。

米澤文雄(よねざわ・ふみお)

株式会社No Code 代表取締役社長
レストラン No Code オーナーシェフ

 1980年、東京・浅草生まれ。22歳で単身渡米し、ニューヨークのミシュラン三ツ星レストラン「Jean-Georges」にて日本人初となるスーシェフに抜擢される。帰国後、「Jean-Georges Tokyo」の料理長や「The Burn」の総料理長を歴任。現在は「Chef+(シェフプラス)」という独自の概念を掲げ、料理人の枠を超えて国内外で多岐にわたる活動を展開している。2026年5月に台湾台北市内にて「No Code Taipei」をオープン。

久松暉典(ひさまつ・あきのり) 

レストラン No Code シェフ

1993年、大阪府生まれ。「Jean-Georges Tokyo」にて米澤シェフに師事したのち、ニューヨークの一つ星メキシカン「OXOMOCO」の日本立ち上げに関わり、同店でシェフを務める。フレンチ、メキシカン、アジアン、ヴィーガンなど多彩なジャンルに精通し、2025年6月より『No Code』のシェフに就任。既存の枠組みに捉われない「メキシカンフレンチ」という新たなジャンルに挑戦している。


酔うための飲料から
味わう「嗜好品」へ

小松:年齢が高い世代は、お酒といえば「酔っ払うために飲むもの」という感覚がすごくあったと思うんです。今はしっかり味わってもらうための嗜好品としてのモノづくりが増えてきていますよね。

米澤:「酔い」の目的は分かりませんが、アルコール=酔っ払うために飲むものという感覚は確かにありました。今はそれが味わうための嗜好品になってきており、飲み手の感覚が上がったと言えるのではないでしょうか。ペアリングを頼む方もいれば、ご自身でグラスを選択する方も増え、選択権を持つ楽しみにシフトしています。

小松:ええ。日本酒業界などが先行してブランディングや味づくりにこだわり、適正な単価でビジネスとして成立するマーケットを作ってきたように、我々お茶の業界もまさにその流れの中にあります。我々お茶のメーカーとしてシンプルにお伺いしたいのですが、お二人にとって「お茶」とはどういう存在なのでしょうか?

米澤:一般的な感覚としては、休憩する時やゆっくりする時に飲む「休息の飲み物」ですね。世界的に見ても、お茶を料理に合わせるという考え方自体がごく最近のことだと思います。ティーペアリングという言葉自体もここ15年、20年ほどの歴史ではないでしょうか。

小松:変わらない本質的な楽しみ方もありつつ、在り方が変化していますよね。

原価の呪縛を越え
レストランが創造する「飲料の価値」

小松:一方で、水だけで過ごされるお客様もいらっしゃるなかで、お茶に1杯1,500円という価格を提示することに、体験上まだハードルを感じることもあるのではないでしょうか。

米澤:お店によってはノンアルコールとアルコールのペアリング金額が変わらないところもあります。そこで「ワインよりノンアルコールのほうがコストが安いのに同じ金額なのはおかしい」とおっしゃる方もいますが、価格は総合的な評価としてレストラン側が決めることでもあると思っています。

小松:提供する側がどう付加価値をつけるか、ですね。

米澤:本来であれば、ベースとなるお茶に私たちがハーブやスパイスを加えるなどして一手間加える。そうしてオリジナリティを入れることで一切金額の分からないものになり、いくら取るかはこちら側に委ねられます。それが料理というものですから。

小松:はい。お茶屋としても、日本茶の可能性の広げ方は、消費者に近い皆さんに自由に表現していただくことが大事だと思っています。

伝統をベースに革新を加える
「メキシカンフレンチ」の現在地

小松:久松シェフは現在、「メキシカンフレンチ」という新しいジャンルに挑戦されていますが、どのような思いからこのスタイルに行き着いたのでしょうか。

久松:前職でメキシコ料理に携わる中で、ベースとなる伝統的なメキシコ料理にフレンチの技法や要素を加えたらどうなるのだろう、という疑問が原点にあります。日本ではまだ「メキシコ料理=タコス」というイメージが強いですが、フレンチなど他の要素と掛け合わせることで、メキシコ料理の奥深さや幅の広さをより知ってもらえるのではないかと考えました。

小松:伝統的な部分と新しいアプローチのバランスはどのように取られているのですか?

久松:メキシコにないものばかりを出しても「これはメキシコ料理なのか?」となってしまいます。ですから、核となる伝統は大切にしています。たとえば、「モーレ」というメキシコの伝統的なソースがありますが、今はそれに鴨のジュ(ソース)を合わせて提供しています。元々ある伝統的なものをベースにしながら、そこに一手間を加えることで、この時代に合った新しい味わいや驚きをお客様に楽しんでいただきたいと意識しています。

小松:なるほど。そうした枠に囚われない表現にあたり、食材選びで大事にされている部分は何でしょうか。

久松:メキシコで使う食材が現地から届くこともありますが、やはり日本で育てられている野菜などは、メキシコとは味が異なります。よって、その日本の野菜の味をどう生かしていくかという点にフォーカスしています。

米澤:「国産しか使わない」「フランス産しか使わない」と厳密に決めているわけではありません。料理との相性と、自分たちが求めている味によって食材を決めています。ただ、根底にはやはり「なるべく国産がしたい」という思いがあります。円が弱くなっている現在(2026年2月現在)、高品質なメイド・イン・ジャパンのものを適正価格で購入できるのは我々としても非常にありがたいことです。

時代の大きな潮流に流されず、自身の軸を持つ

小松:我々の日本茶業界も大きな転換点にあります。2026年現在(取材時2026年2月)、特に抹茶の需要が急増し、1年先まで仕入れの予約でいっぱいの状況です。抹茶が増えることで煎茶の栽培面積が減り、原価も高騰しています。生産者の高齢化が進む中、大量生産ではなく、適正な価格で本当に良いものを作って残していく循環が必要だと考えています。

米澤:時代に流されすぎないことが大事ですよね。大きな潮流のスピードがものすごく早い現在、流行を追ってすべてを抹茶に切り替えた瞬間に、ブームが去るリスクもあります。何かをベースにして一つのことに偏る経営は、今はリスクが高いと思います。自分たちがやりたいことをしっかり持ち、それを実行することが重要ではないでしょうか。

東京から世界、そして地方へ
10年後を見据えた挑戦

小松:最後に、米澤シェフは今後5年や10年の先で目指していきたいところ、久松シェフはお店として目指していきたい部分をお伺いしたいです。

米澤:私はもう一度、海外で5年、10年ぐらい仕事をしようかなと思っています。そして日本に帰ってきたら、そのフェーズは地方に行くかもしれません。いろいろな経験や知識を得た上で、地域の良いものを世界に持っていったり、自分が得てきた知見と融合させて昇華させていくような、そんな仕事がライフワークになればいいなと。

久松:まだ「No Code」としては「メキシカンフレンチ」業態が始まったばかりなので、まずはこのジャンルを表に出していくこと。「メキシコ料理=タコス」というイメージ以外にも素晴らしい料理があるということを、少しでも知ってもらえればと思っています。

小松:常に挑戦をする「No Code」らしい目標ですね。非常に共感できます。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。これからの展開も非常に楽しみにしています。


ボトリングティー「SEISOU」

静岡県でも珍しい烏龍や台湾茶用の「香寿」という茶品種をメインに使用し独自のブレンド。独特のマスカットのようなフルーツの香りと、ほのかな自然由来のあまみで口の中を満たしてくれます。雑味のない、洗練された高級感を味わうことができます。

※ SEISOUはWEBでの販売な下記限定となります。

レストラン No Code

西麻布にある隠れ家レストラン「No Code」は、米澤シェフ、久松シェフ手がけるイノベーティブなダイニング。2025年6月、紹介制から一般予約を解禁し、メキシコのスパイスや発酵文化とフレンチ、日本の食材が融合した唯一無二のジャンルを展開。カウンターのみの洗練された空間で、シェフとの距離0mの臨場感あふれるライブ感をお愉しみいただけます。

https://www.instagram.com/nocode_tokyo/?hl=ja

商品一覧を見る